食料の大量生産のことなど
2012-02-16


今回は食料に関するドキュメンタリーを2本。

『フード・インク』
 2008年/アメリカ

アメリカの食料生産現場の実態を描いた作品。
ファスト・フードが外食産業に工業的フードシステムを持ち込み、今ではわずか数社の巨大企業が食料生産から流通、販売の現場を支配している現状、そこから生み出される食料の危険性についてが描かれている。

工業フードシステムの源流をたどっていくと、アイオワ州のコーン畑に行き着く。
政府の補助金により生産コストよりはるかに安い価格で取引される加工用のトウモロコシは、家畜の飼料をはじめ、あらゆる食品添加物に加工される。

大量生産される牛は、もともと食べないコーンを主にした飼料を食べさせられ、腸菌が耐酸性をもつようになり、O-157など、より危険な大腸菌を生み出す。
巨大企業の支配下にいる養鶏農家は、業者が望む食肉を作るために多額の借金をし設備投資を強要される。
そして飼育現場は不法就労者の低賃金労働によって支えられている。彼らにはなんの補償もなく、怪我をすれば使い捨てにされるだけ。

もう一つ工業フードシステムを支えるのが遺伝子組み換え作物。
アメリカ大豆の90%は遺伝子組み換え大豆。
品種は特許によって守られていて、企業に無断で栽培してはならない。
不可抗力で品種が交配してしまっても、栽培した農家に説明責任がある。
農家は企業との莫大な裁判費用を捻出するか、罰金を払うかしか選択肢がない。

消費者は自分が巨大企業に影響力があるとは思っていないが、消費行動により企業の方向性は変わる。
たばこ産業の例を観れば、公共政策を支配した大きな力はもはや崩れ去った事がわかる。
「病院に行く人が減ること、それが唯一の成功だ。国政の成功だ」と映画は締めくくられる。

なかなかいい作品だった。
興味を持たれた方は映画にも登場するマイケル・ポーラン著の『雑食動物のジレンマ』も必読。


フード・インクとセットで宣伝されていた作品。
『ありあまるごちそう』
 2006年/オーストリア

こっちの作品はちょっと肩すかしだった。
予告編や宣伝から、食料の大量生産・大量廃棄についての映画かと思って観たけれど、なんかちょっと違った。
まあ、内容的には「食料生産のグローバル化はいけませんよ」といったことが、先進国に食料を送りながら飢餓に苦しむ途上国などを例に出して描かれている。
なんか全体的にとっちらかった印象で、お時間のある方は観てもいいかも。
[農とか、食とか]

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