核廃棄物と再処理のことを
2012-02-06


放射性廃棄物関係のドキュメンタリーを2本観た。

『放射性廃棄物 ~終わらない悪夢~ 』
 2009年/フランス

隠された原発事故、原発周辺の放射能汚染、使用済みの核燃料はどうなるのか、ロシア、フランス、アメリカでの実態を追ったドキュメンタリー。
まずビックリしたのは、放射性廃棄物の船からの海洋投棄は禁止されているが、施設から直接海に垂れ流される分には法に触れないということ。ドウナッテルノ?
そして再処理施設周辺の信じられないほどの環境汚染。
それを知らされぬまま暮らす人々。
核燃料再処理施設の稼働は「常に原子炉の事故が起きているような状態」、「日々放射能漏れが起きているような状態」だという。
青森県六ヶ所村に作っているあれは、こうなるって事か。
以前そんな話を聞いたときには「まさかそんなことあるはずがない」と思っていた。
だって施設を作ってお金をもらう青森県はともかく、被害を直接受ける岩手県が黙っているはずがないと思っていた。
しかし原発事故後の都道府県、市町村等行政の動向を見ると、まったくあり得ることだと思える。

原子力は使用済みの燃料をリサイクルできる、地球に優しいエネルギーだと宣伝されているが、フランスの再処理工場からロシアへと流れる再処理した核廃棄物の実態を観るとそれもまたウソらしい。
再処理によって出来るのはウランが95%、プルトニウムが1%、そして最終廃棄物4%。
フランスの原子力企業アルバ社は再処理されたウランの90%はリサイクルできると主張しているが、実際には10%しか再利用されていず、残りはそのまま放置されている状態だ。
そしてどんどん廃棄物は増えていく。

莫大な費用をかけ、そして環境を汚染し続け、再利用もされない再処理は何の意味があるのだろうか。


『100,000年後の安全』
 2009年/デンマーク

そしてこちらは現在フィンランドで建設されている核廃棄物の最終処分場“オンカロ”のことを扱ったドキュメンタリー。

10万年。それは核廃棄物が生物に無害な物質になるのに要する時間。
地上は戦争や政変、天変地異などが起こるため危険。そこで地下500mの安定した地層の中に100年かけて廃棄物を埋め、10万年間保管する。
問題は10万年間どうやって保管していくかということ。
方法は二つ。
一つ目は危険であることを表示すること。
標識「マーカー」を置く。石碑のようなものに数カ国語で危険であることを示す。
10万年後の人々(あるいは生物)は、現代の言語を理解できるだろうか。
文字ではなく絵で。
恐怖を連想させるイラストで危険であることを示す。
たとえば「ムンクの叫び」をそこに掲げる。
ここまで来るともはやブラックジョークの領域。

そしてもう一つは警告を残さず、施設があることを隠してしまう。
未来の人々の理解できないものを残しておくのは危険で、現在の思惑とは逆に好奇心を刺激してしまう恐れがある。
遙か昔に作られた遺跡に「危険」と書かれていたら、どんな危険があるのか突き止めたくなるだろう。
警告を発するより、存在そのものを忘れさせれば、処分場を発見される可能性も低くなる。

文明は今より進んでいるか?退いているか?
それは誰にもわからない。
どちらがよい方法なのかを10万年前の現代人が判断することは出来ない。
どちらにせよ悪い冗談のような現実の話。

原発事故前は日本でも「最終処分場の候補地を探しています」なんてCMをよくやっていたけれども、これから手を上げる勇気のある自治体は出てくるだろうか。
どちらにせよ核廃棄物は日々増えていく。廃棄物は消してしまうことも、害の無い物にしてしまうことも出来ない。
無害になるまで10万年間待ち続けるしかない。
今できるのはこれ以上増やさないということだけだ。
[農とか、食とか]

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