踊る「食の安全」
2006-07-05


『踊る「食の安全」 農薬から見える日本の食卓』
 松永和紀/家の光協会

今年から農薬の残留基準に「ポジティブリスト制」ってのが始まった。
流通業界は中国野菜などの輸入に大きな支障が出たりして、かなり大変らしい。
でも、こちら生産の現場としては、農協からなにやら簡単な説明があってちょっとしたビラが回ってきたりする程度で、いまいちピンと来ない。
たまたま本屋でこの本を見つけて、帯にちょっとそれらしい事も書いていたので読んでみた。

まあ、内容としては、農薬ってのはこんなに安全です。日本の農業のために、どうぞ消費者の皆さん、農薬をヨロシク。ってなかんじの、消費者向け農薬啓蒙書。
やはり大規模省コスト農業でなければ日本の農業はダメ、ってのが前提になっている。

確かに農薬に対して過敏に反応しすぎる向きもあるかもしれないし、農薬に対して正しい知識を持ってもらうのも大事だ。それにしてもこの内容はどうだろうか。

まず筆者が京都大学大学院の農業分野の修士課程を修了して新聞記者になった人。その人が「農薬の事なんにも知りませんでした」「この取材をするまで農薬は悪いものだと思っていました」ってかんじで話を進めているのが、最初から最後まで腑に落ちない。
安全性に対する説明なんかも、別の立場の人がその資料を見たら、まったく逆の結論が出せるような主観的なもの。

農業の現場を取材したみたいな事も書いてあるけど、農家から言わせると、ほんとに農業の現場を知っているの?ってかんじ。
最後の章の実例も農業の現場を知らない筆者の主観で染まっている。

日本の農業というものを考えた場合、農薬は必要だし。毛嫌いせずに正しい知識を知ってもらうのも大事だけれど、この内容じゃあ肝心の毛嫌いしている向きにまったく理解されないんじゃ無かろうか。
[農とか、食とか]

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